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武道の事典用語集武道歌選剣道居合道柔術弓道槍術塚原卜伝遺訓抄柳生石舟斎兵法百首示現流兵法書二刀流兵法伝書柳生新陰流百首美人草秘歌他

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絶版希少本 武道の事典用語集武道歌選

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★商品説明★

日本の武道 武道の事典 用語集<付>武道歌選 

講談社 昭和58年発行
セット価格 188,000円
約30×22×3cm
金箔押し布張上製本
モノクロ 
207ページ


※絶版

日本の武道全集本のうちの一冊。

前半は「用語集」日本の古武術、古流武道および現代武道における事理(技と理諭)を中心に、さまざまな流派の体系と伝系、名人達人の遺した伝書とその中の重要事項などを主眼として編集。日本の武道用語に特化した事典。
後半は「武道歌選それぞれの武道の流派の心構えや教えの真髄、その奥義を、五・七・五・七・七の和歌の形にして伝授したものを厳選、序・跋(奥書・あとがき)、用語解説もあわせて収載した珍しい本。

(日本の武道)
現代武道十種目を中心として、各種武道における、それぞれの技術や歴史、開祖の教え、
伝書などの参考文献も含めて、その思想哲学から現代の組織化されたスポーツとしての側面についてまで網羅した全集。
豊富な写真、資料などの写真図版はもとより、昭和末期刊行当時の、
その道の最高峰・第一人者たちを執筆陣としたもの。
そのうちの武道の事典 用語集<付>武道歌選。 

武道歌は、それぞれの流派の心構えや教えの真髄、その奥義を、五・七・五・七・七の和歌の形にして伝授したもの。
その中でも選りすぐりの武道歌を掲載、跋(奥書)、用語解説もあわせて収載。
歌書ごとに一連番号を付け、その番号順に排列した補注を末尾に追加。
歌の文字づかいは原典のままを原則とし、その他は現代かなづかいに改めた。ただ、現代の表記法とあまりにもかけ離れた若干の歌については、読みやすいように配慮。
特に各流派の武道歌、武術道歌についてまとめられた本書は、この分野において類書もほとんど無く、大変貴重な資料となる一冊です。

【全集全体の序文より】※本書は口絵写真無しのタイプです。
『日本の武道』刊行にあたって 編者代表 今村嘉雄
「日本のこころ」と武道
 現代の武道は、いわゆる古流武道を伝承発展させたものである。古流武道は、われわれの遠い先祖が狩猟を生産活動としていた時代に源を発し、狩猟法からしだいに武技、護身術として発達し、室町時代の後期ごろに流派として素朴な体系をもつようになった。これらの古流武道は、原始的な神霊思想(シャーマニズム)とも関連し、さまざまな祭典や儀式の行事として、また貴族や武家の練武と遊びを兼ねた狩猟活動として、さらには「通し矢」などのような近代的ともいえる記録競技や、江戸時代の藩校に見られるような教科活動として、活発に行われてきた。とくに競技的、教科活動的な側面が現代武道として継承、発展しつつあるとも言えるであろう。
 一方、古流武道は神道・仏教(顕・密両教、とくに禅)・儒教・老荘思想、さらには国学思想などとも深いかかわりをもつことによって、日本人としての道徳観や美意識の確立に大きく寄与してきた。これらの思想は、その技法とともに現代武道に伝承され、さらに高度の西欧的な教養を加えて、日本国民の精神構造の基盤をなしている。
 戦後、武道は急速に国際化し、昭和三十九年(一九六四)の東京オリンピックには正式種目として「柔道」が加えられた。欧米の産業人や青年層には、今や武道を通して日本人の心を知ろうとしている人たちが急速に増加しているという。戦後数十年で目ざましい経済成長を遂げた原動力を武道の心に求めようとしているのである。もし「武道の心」が新渡戸稲造の言う「日本のこころ」(soul of Japan)に含まれるならば、欧米人の発想は必ずしも短絡に過ぎるとは言えないかも知れない。
 しかし日本はいま政治、経済、外交、教育等いずれの面においても、決して楽観が許される状態ではない。とくに教育の荒廃は、それが先進諸国に共通の悩みとはいえ、この複雑な症候群への対策こそは最も急を要する深刻な課題である。
 この『日本の武道』は、武道が日本人固有の最もすばらしい文化財の一領域であるという認識に立ち、二十一世紀の日本を展望しながら、新しい時代に即した武道による社会秩序の教育的再建を、健全な良識をもつ人々に広く呼びかけようとするものである。
 本叢書では、まず武道の成立過程やその思想的背景を大観しながら、武道の古典の中にそのまま現代武道の学習に通ずる技法・心法の妙があることを示すとともに、それらが現代武道にどのように生き生きと、しかも力動的・合理的に実現されているかなどを、現代武道十種目を中心に実証しようと試みた。すなわち数十ページに及ぶ口絵に事理一元(技と理論との一致)の武道精神を象徴化し、本文では豊富な連続写真、図解などによって技法の分析的かつ総合的な解明を試みた。
 その場合、当然ながら武道とスポーツの関係が解明されなければならない。武道と武士道との関係、武芸または武術と武道との関係も同様である。武道が競技的な側面を持つことは当然のことながら、西欧スポーツは本質的に「遊び(プレイ)」を前提とし、武道は本質的に「人間形成(修身)の行い」であることを前提とする。それは嘉納治五郎が「競技」という用語を避けて「大日本体育協会」とし、「スポーツ振興法」(昭和三十六年制定)が、競技的・非競技的な運動を含めて、スポーツは「心身の健全な発達を図るためにされるもの」と規定したのと同軌である。いずれもスポーツ解釈の武道的・日本的把握とみてよい。
 なお本叢書では、武道と特に関連の深い、美術、伝統芸能(茶・書・能・花)をはじめ、禅、儒、養生訓までを採りあげた。冒頭にも述べたように、武道をわが国固有の根源的な文化財として総合的に把握することを編集基本方針の一つとしたためである。
 また、先にも触れたように各武道の巻頭には独特の導入ページ(口絵)を設け、それぞれの武道の精神を視覚的に把握できるように工夫した。さらに本文のまえに、武道を志向する読者の精神的な支えとなるような特別読物を、広く各界の権威の方々から寄稿していただいたりして収める等の配慮を加えた。
 この『日本の武道』は、直接には学校や職場や町なかにあって、みずから武道にはげみ、またその指導に当っておられる方、武道を職務の一端とされている警察官、自衛官、および有段者を含む一般の武道愛好者の方々を対象として編述したものであるが、それらの方々の子弟である学生・生徒の諸君にもぜひ愛読されるよう心から熱望してやまない。

(本書は巻頭カラー口絵無し)
日本の武道 武道の事典 目次
●用語集
用語集 
凡例
①本用語集は、古流および現代武道における事理(技と理諭)を中心に、さまざまな流派の体系と伝系、名人達人の遺した伝書とその中の重要事項などを主眼として編集した。
②伝書その他の引用文献については、読者の便を考えて、新字体・現代かなづかいに改め、漢文は読み下し文にした。ただ、「和歌」に関しては、原則として原典の文字づかいのままとした。
③項目の分類表示については、略号を使用した。()内は別称。
【剣】剣道(剣術、刀術、兵法)【柔】柔逆(柔術、和術、紐討)【弓】弓道(弓術、射術)【空手】空手逆(拳法)【薙刀】なぎなた道(長刀術)【居合】居合道(居合術、抜刀術)
【杖】杖道(杖術、棹の手)【合気】合気道【拳】拳法、少林寺拳法
【槍】槍術(錨、鎌鑓【馬】馬術【砲】砲術(火術)【水】水術(游法)[忍]忍術(忍法)
【鎖】鎖鎌術【乳切】乳切木術(契木)【縄】縄術(捕縛術)【捕一捕手術
【武一般】武道一般【抻】神道【仏】仏教【禅】禅学【儒】儒学【扎】礼法【制】官制、法制
【武書】武道書【武語】武道用語【道歌】武道歌(伝歌)【関連】武道関連語
●武道歌選
塚原卜伝遺訓抄  塚原卜伝
柳生石舟斎兵法百首  柳生宗厳
柳生新陰流百首 
二刀流兵法伝書(付・円明流水哉伝)  宮本武蔵玄信
小野派一刀流 
北辰一刀流  千葉周作
示現流兵法書  東郷重位
示現流兵法書題伊呂波歌 
直心影流兵法理歌
田宮流居合之歌 
竹内流心之備兵法百首
関口流柔術理歌九十八首
十文字鎌兵歌百首
美人草秘歌  吉田流弓術の秘歌
小池流水芸歌訓 
鉄砲十首歌二種  稲富流鉄砲  井上流鉄砲道
凡例
●武道歌選
①歌には、歌書ごとに一連番号を付け、その番号順に排列した補注を末尾に加えた。
②歌の文字づかいは原典のままを原則とし、その他は現代かなづかいに改めた。ただ、現代の表記法とあまりにもかけ離れた若干の歌については、読みやすいように配慮した。
③歌書の排列は、剣・柔・槍・弓・馬・水・砲術の順とし、同じ分野内では時代順とした。
④傍注および補注に、「イ」「ママ」の二種の略号を使用した。イは「異本」、ママは「原典のまま」を意味する。
執筆:今村嘉雄

●編集委員
代表 今村嘉雄 束京教育大学名誉教授・文学博士
老松信一 前全日本柔道連回事務局長
江里口栄一 日本武道館理事
伊保清次 中京大学教授
植芝吉祥丸 合気会理事長
藤原稜三 国際武道アカデミー理事
醍醐敏郎 警察大学校教授
鈴木義孝 日本少林寺拳法連盟理事
入江康平 筑波大学助教授
桑田忠親 国学院大学名誉教授・文学博士
鎌田茂雄 東京大学教授・文学博士
表章 法政大学教授

【武道歌選 より一部紹介】
塚原卜伝遺訓抄 塚原卜伝
 「卜伝百首」ともいう。本稿は京都市鈴鹿家本を底本としたが、これを東北大学図書館本と比べてみると、
 置き刀夏は枕に冬は脇 春秋ならばとにもかくにも
 武士の夜の枕に鼻紙を しいてぬるこそ教なりけれ
の二首が鈴鹿家本にはみられない。逆に、鈴鹿家本にあって東北大学本にみられないものも一首ある。
 なお、本書の跋文(あとがき)は三段落に別れており、第一の段落は元亀二年(一五匕一)にこれを入手した加藤相模守信俊の筆。沢庵に乞うて序を記してもらったという第二の段落は、相模守を祖父とする人物の筆で、さらに「この武道百首の読師卜伝は」に始まる第三の段落は、また別の人物の筆によるものであろう。
 もののふ(武士)の名にあふものは弓なれや深くもあふげ高砂の松
 もののふ(武士)の魂なれやあづさゆみ(梓弓)はる日のかげやのどけからまし
 もののふ(武士)のいるや弓箭(ゆみや)の名にたちて国を治るためしなりけり
ほか

柳生石舟斎兵法百首 柳生宗厳
「石舟斎兵法百首」は、文禄二年(一五九三)九月の日付のものが最も古い。現在、東京の柳生宗久氏所職のもの二点と、奈良県生駒の宝山寺所蔵のもの一点、計三点があるが、三者それぞれ内容に若干の相違がある。百首未満のもの、超えたもの、漢字書きのもの、仮名書きのもの、無刀が手刀になっているもの等さまざまである。本稿では慶長六年(一六〇一)二月、宗厳が能の金春流家元、竹川七郎に与えた宝山寺本を底本とし、他の二本に所収のものは後に加えた。なお、卜清作と注記されているものが十首ある。この百首は、日常生活の中での武芸を詠んだものが多く、儒教的、修養的な色彩のつよい表現が随所にみられるのが一つの特色である。
 世をわたるわざのなきゆへ兵法を隠家とのみたのむ身ぞうき
 かくれがとたのむはよしや兵法の あらそひごとはむようなりけり
 兵法の舵をとりても世のうみを わたりかねたる石の舟かな
 兵法はかねてこちき(乞食)とおもはずば争ひゆへにたゝかれやせん
 しあひしてうたれて恥の兵法と心にたへずくふうしてよし
 兵法は能なきもののわざなれば口業喧嘩のもとひ成けり
ほか

柳生新陰流百首
 東京柳生家所蔵本には「先代手記ノ書」とあり、筆者は不詳だが、内容は十兵衛三厳の「月之抄」の内容が多く詠み込まれている。百首としたのは、これを引用した佐賀小城の鍋島大蔵元敦の「見観註解」に「新陰百首という」としているのでそれによったが、実際には百二十首である。「見観註解」と「月之抄」の内容とを照し合わせてみると、十兵衛の書のようにも思われる。
 三学や九箇天狗太刀六つの太刀また廿七きりあひの事
 五箇の身の位わするることなかれ兵法つかふ人のうんけん(運剣)
 身はひとへ敵のこぶしをわが肩に くらべてこぶし盾につくなり
 いつもたゞ左のひぢをのばす事わすれはしすなわすれはしすな
 さきのひざ身をもたせつゝあとのひざ開くことこそよき左足なれ
ほか

二刀流兵法伝書(付・円明流水哉伝)
 二刀流は宮本武蔵玄信(一五八四-一六四五)の兵法流儀。二天一流、武蔵流、二刀流、円明流などとも呼ばれる。この伝書は、村上平内正雄(村上派二天一流)の子村上平内正勝、同大右衛門正之兄弟の兵法問答を門人が書きとめた形になっている。
 円明流は、二刀流以前の流名、水哉は左右田武佐藤原邦俊。先祖は代々三河に住み、家康につく。八田九郎右衛門尉智重に武蔵流を学ぶ。
 夜もすがら心のゆくへ尋れば昨日の空に飛鳥の跡
 移すとも水も思はず移るとも月も思はぬ広沢の池
 敵もなくわれもなぎさの海士小舟漕ぎゆく先は波のまにまに
 剣術を何と答へん岩間もる露のしづくにうつる月かげ
 思ひなく巧みもあらぬ夢想には虎さへ爪の置き所無し
 乾坤を其儘庭に見るときは我は天地の外にこそ住め
 剣太刀もろ刃の利きを足に踏み死にも死になむ君によりては
 振りかざす太刀の下こそ地獄なれ一と足すゝめ先は極楽
 稽古をば疑ほどに工夫せよ解たるあとが悟りなりけり
ほか

小野派一刀流
 小野派四代治郎右衛門忠於が元禄二年(一六八九)津軽越中守に呈した『一刀流兵法目録』には道歌がみられない。同時に呈した『一刀流割目録』に一首、『同仮字目録』に三首ある。それに山岡鉄舟が木下淡路守著『一刀流剣術』及び『月窓』の断章を筆写したものから数首、さらに梶派一刀流の『一刀説』所収の小野忠明の道歌一首を加えた。
 ちはやふる神の鳥居のやうし木を門にてさせばあふとこそきけ(『割目録』)
 敵をただ打つと思ふな身をまもれおのづからもるしづがやの月(『仮字目録』)
 是のみと思ひきはめそ幾数も上に上ありすいもうのけん(同)
 世はひろし事はつきせじさりとては わがしるはかりあると思ふな(同)
 桜木をくだきて見れば花もなし(淡路守)
ほか

北辰一刀流 千葉周作
・北辰一刀流十二箇条目録
 この道歌は、千葉周作成政(一七九四-一八五五)が、一刀流の十二箇条目録を詠んだものである。前書に「箇条目録十二ヵ条は一ヵ条ずつ十二ヵ条目をあげて、その次第を伝える処なり。一をつみて十二と挙げたるは意味の深長なる処あり。一刀より起こりて万刀に化し、万刀一刀に帰す。年に月の数十二ヵ月あり。一陽に起こりて万物造化し、陽中に陰をめぐみて万物生じ、陰ここに極まりて年月の尽くるものかと見れば、陰中陽を発してまたいつやら青陽の春にかえる。陰陽順(循)還して玉のはしなきが如し。当流の執行もまた斯の如く、一より起こりて十二に終る。終ればまたもとの一にかえりて尽くる事なし。またもとの初心にかえり、またもとにかえり、無量にして極まりなき心を持って十二の箇条を挙げたり」とある。
・北辰一刀流口授・兵法目録
 本項所収のものは、山岡鉄舟筆写本(村上康正氏所蔵)の「北辰一刀流口授」「同兵法初・中目録」「千葉周作遺稿」(千葉栄一郎)所収の「剣術名歌」を収録したもの。重複もあるが、敢てそのままにした。中でも「剣術名歌十首」には他流の道歌の引用もみられる。
 〔北辰一刀流十二箇条目録〕
 立向ふ敵の眼に気を付て拳切先思ひゆるすな(二之目付之事)
 受し気のゆるまぬ中に切返せ敵の打太刀我ものにして(切落之事)
 気と力心につれて打つ太刀は春のいとゆふ秋の稲づま(遠近之事)
ほか

示現流兵法書 東郷重位
 本書は、流祖東郷藤兵衛重位(一五六一-一六四三)作の示現流兵法の基本伝書。上中下三巻から成り、奥書に元和七年三月吉日、東郷肥前守重位とある。重位は初め丸目蔵人佐の新陰タイ捨流を学び、京の僧善吉に就いて天真正伝神道流系の自顕流を修行、のち一流を起こし示現流に改めた。重位の流儀は禅思想の影響を多分にうけ、自身新古今集の造詣があり、同流道歌には古歌の引用がかなり見られる。また自作の道歌も多く、兵法(剣術)の技法を発声時の舌の動きと関連させて説明し、心の問題を男女陰陽の和合をもって説くなど密教的思想も濃厚である。以上の流儀の特色は道歌にもあらわれている。
 船となす谷の室の木(榁)水こそは心ともなれいのちともなれ
 つなぎたる舟にさほさす心ちして用心するはいたづらとしれ
 用心は折ふし毎にあらためよ舟の櫓櫂とかひ(楫)の心に
 身をば舟になぞらへさまざまの心をのせてかぢ(楫)こたへせむ
 桜麻にまじるよもぎのいかなれば神の御しでに色かわるらん
 ときは山其名諫よ下草は今朝ふる霜に色のかわれる
ほか

示現流兵法書題伊呂波歌
 奥書きに、貞享五年辰四月古日、伊勢松浦(印)平出源庵殿とあり、いわば「示現流歌伝書」である。「兵法書題伊呂波歌」の題簽がついている。鹿児島市東郷重政氏(示現流宗家)所蔵本。右宗家にはこのほかに『示現流伊呂波歌』「兵法 和歌集」がある。なお、歌意不詳の歌もあるが、今後の研究に待ちたい。
 いながらも敵のこぶしに気をつけて目付も味もこの外になし
 ろく道に迷は地獄引かへて悟れば六つのおしへとぞなる
 はしたなく打ぬとおもふ心こそ惜みひかふる網のかゝるに
 にはかにも詰かけられて其まゝに寸のうちにて敵を痛めよ
 ほとけとて外より来る道もなし無念無想のこゝろ味なり
ほか

十文字鎌兵歌百首
 本書前文によると、宝蔵院二代胤舜の印可をえた磯野左兵衛尉信元と葭田内膳正清正の両人が、互に相はかって古流の損徳を勘案して一流をおこし、三十七ヵ条の拍子と所作をきめた。しかし初学の者には理解しがたい点もあろうという配慮からこの百首を作ったとなっている。奥書きに、貞享三年(一六八六)の日付があり、伝系ならびに受伝者名がしるされている。
序(略)
 常々の稽古の時も打むかふ敵とおもひてかねて敬う
 身のかねは腰すはりて四寸みに なりて手足のゆがまぬがよし
 跡(後)先にちからも人ず足ふみは うきたつやうの心なりけり
 跡先にたるみもあらず手合をば廣きせばきのあはひ持べし
 手の内はたゞやはらかに持なして あたる時にぞ手をばしめぬる
ほか

美人草秘歌
 吉田流弓術の秘歌である。吉田流弓術の祖は日置弾正正次の門人吉田上野介重賢である。重賢の二代吉田出雲守重政(出雲派)、三代同出雲守重高(露滴派)、三代の門下に吉田出雲守重綱(花翁流)、吉田左近右衛門業茂(左近右術門派)、田中秀次(大心派)その他の名人が出る。また、二代の重政門からは石堂竹林如成、吉川六左衛門重勝(雪荷派)等の巨人が出る。この「美人草秘歌」の作者は田中大心秀次とされているが、果たしてどうであろうか。「美人草」を歌伝として別に示したのは天心派だけではなく、それも慶長、元和、寛永頃(十七世紀前半)には、その数もさほど多くなく、代が下るにつれ、口伝、書伝ともに賑やかになり、伝歌も次第にその数を増した。なお、本稿は「生弓斎文庫本」によったが、各歌に付けられている注釈は割愛した。
序 それ当流の射は、日置弾正豊秀より、江州吉川出雲守道宝に正統を伝うるなり。よって巻々射形骨法の理を記し、剛弱の心専用とするなり。この秘歌は術理の二を示し、自師賢学の位に至るためなり。(略)
 もののふの知らでかなわぬ弓の道 弓馬二つは左右とぞきく
 弓構は三つの習のあるぞかし その品々をよく口伝せよ
 打起引にしたがひこゝろせよ弓に押さるなおもへ剛弱
 手の裏は竹に藤咲くごとくにて風にしたがひしめゆるべあり
 弦道といふ事しらぬ人はたゞ艫櫂もとらぬ船にのるかな
 矢束ほど引てあぢはへ心なく弦にひかれなひぢのちからよ
ほか

小池流水芸歌訓
 本書は三十八首から成る。末尾に「右三十六帖歌の本原は、流祖より、人を教うるの正術にして、すなわち当師友正君伝授の心法なり」とあり、本来三十六帖であるが今二帖を加えた、といっている。
 小池流は小池久兵衛成行(一五八八-一六五九)が祖。駿河の人。元和五年(一六一九)徳川頼宣の紀州移封とともにこれに従い御船奉行竹本丹後に属して船手衆に水芸を指導した。小池流は、鎌倉時代の藤原秀時にはじまる野島流の系統という。
 誰れ人も知ものにせんうきし身の心やすくも游るゝかな(平游 ひらおよぎ)
 沈むぞと人は恐るゝ海川に およげるみちは我もうれしき(同)
 手を出せば足をかゞめし立およぎ たへぬ思いをのびやしるらん(立游 立ち泳ぎ)
 玉やりの早ごをかへし打ときは ひざらをあげて立游せり(同)
 おのづからすがたもいでゝ浮みつゝ流 をこめて休む捨浮(捨浮)
 うな原に手足をのばし猶うかん水になれそむ楽みぞこれ(同)

鉄砲十首歌二種
・稲富流鉄飽十首歌
 この十首歌は、武道伝歌の中でも、最も古い方で、数えうたになっている。天文二十三年(一五五四)稲富相模守祐秀が佐々木少輔次郎義国から銃術を学び、その奥秘を極めてこの十首の歌を伝授されたものであるから、「卜伝百首」(元亀二年)よりも十七年ほど古い。祐秀の孫、祐直(直家とも。一夢斎と号す)は一色家、細川家に仕えたのち、家康、秀忠の砲術の師となった。この流系からは一貫流、大熊流などが出た。
・井上流鉄砲道十首歌
 井上流砲術の祖は井上九十郎外記正継。一名外記流とも。出自不詳。慶長十九年(一六一四)徳川秀忠につかえ五百石、のち千石。正保三年(一六四六)九月十三日、相役の稲富直賢と砲術のことで争いを起こし、仲介の席にあてられた長坂血槍九郎宅で仲介者の長坂丹波守と稲富直賢を斬ったため、居合わせた人たちに斬殺された。のち、嫡子左太夫が幕府鉄砲頭となり以下代々幕末まで続いた。この十首歌の作者は不詳。(東京、所荘吉氏蔵)
 〔稲富流鉄炮十首歌〕
 一あるめあてをしらでみな人の しどろもどろにはなす鉄炮
 ニ色をたゞつよかれとねがはゝば筒と薬に如く物はなし
 三色にてとりあつめてぞあはせける加減すこしの大事成けり
 四さいなく鍛錬したる人だにも ときおりおりにかはる物かは
 五くい(極意)とは目当の外にめあて有 口伝のうちにこゝろ持あり
ほか
 〔井上流鉄砲道十首歌〕
 一ツある目当を打とおもへ唯ちかふはおのが心にぞあれ
 ニツ有目当の外に目当あるを心に伝へありと知べし
 三目当いつもの時はいらねども つめのつめには用るとしれ
 四季を打目当に習あるものを しらで打こそはかなかりける
 五く意(極意)とは五常の稽古に有物を ねても覚ても是を忘るな
ほか


★状態★
昭和58年発行のとても古い本です。
布張り上製本の外観は経年並み良好。
天・小口に経年並ヤケしみがそれなりにあります。

本文モノクロページ余白部に、経年ヤケしみあり、
特に奥付~巻末の方に、経年しみが目立ちます。

カラー写真図版良好、目立った書込み・線引無し、
問題なくお読みいただけると思います。
(見落とし・入力ミスはご容赦ください)

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